[感想] 『道草』 夏目漱石 - 『吾輩』と同時期に取材って本当ですか??


そもそも健三って金持ちじゃないんだよね。そんな健三のもとに
よくもまあ、金目当ての人間がこれだけ集まったものだ。


各々の自己本位な心のありようを照らすために、漱石
金の介在する人間関係を執拗におったのだろうか。


自己本位というと、健三夫婦のエゴのぶつかりあい、というか
ぶつけあいもすさまじい。夫は妻を馬鹿だとののしり、妻は夫を
偏屈ジジイよばわり。こんな夫婦にも、フツーに
赤ん坊が生まれたりするから、不思議だ。


タイトル『道草』からの連想で
勝手に『草枕』のような高踏的な小説を予想してたんだけど、
予想大ハズレ。むしろ昼ドラにできるくらい
濃い世界でした。


作中、執筆中の『吾輩は猫である』にふれられていたりして
両作品はほぼ同じ時期に取材されているとのこと*1だが、
意外だ。あまりに作品のトーンが違いすぎて。


私は『吾輩』の方が好き。それは単純な理由で、ただ単に笑えるから。
そしてひとしきり笑ったあとに、楽しかった飲み会の解散時みたいな
寂寥感が漂うから。


学生の頃は今よりもっと頭が固くて、深刻顔の自然主義文学とか
喜んで読んでて、さらにその時は「笑い」そのものが
なんか不謹慎な感じがして拒否感を抱いていたけど、
今は「笑いなんて」っていえるほど若くない。でも、
かといって健三が七転八倒する様子をみて
「あぁ、若いもんがやってるのゥ」と目を細められるほど、
枯れてはいない(当然だ)。


わかんなかったこと:
『道草』ってタイトルは一体どこから??


ところで、漱石の『文学論』、よみたいなー。
Fact and feelings.
まえ古本屋で見たとき買っとくんだったよ。。。

*1:新潮文庫の註による