親切?いじわる?手紙がもっていかれてしまった - "Collectors"(Raymond Carver)
『翻訳夜話 (文春新書)』所収の短篇。私は柴田訳の方が淡々としていて好きです。
短篇として流れがいいよなぁと、ほれぼれ。
無駄な要素が一つもない。タイトルどおり、「集める」というのがキー。
- 失業中の男、採用通知が届くのをひたすら待っている
- そこへ訪問者。しかしそれは郵便配達夫ではなく、セールスマン
- セールスマンは男の妻を訪ねてきていた
- 別居中だと答える男。訪問をうっとおしく思う
- セールスマンは掃除機のデモンストレーションで掃除する。このとき、これまでその家にたまってきたいろいろがゴミとして集められていく
- そこへ手紙が配達される。セールスマンはそれを男に渡すかわりに自分のポケットにいれてしまう。「奥さんからだ、不要だろ」と言って。
- 心が軟化してコーヒーをすすめる男。セールスマンはそれを断る。
- セールスマンは男に掃除機をすすめる。
- 「もう引っ越すし、邪魔になるだけだからいらない」と男が断る
- 結局、その手紙が本当に奥さんからなのか、そうだったとして内容は何なのかは分からないまま話が終わる
描写も簡素ながら的を得ていて、太ったセールスマンが、薄汚い男一人暮らしの家で、ゼーゼーいいながら掃除機をかけまくるところがイメージできる。