『プレーンソング』- 風通しのよい小説


プレーンソング (中公文庫)

プレーンソング (中公文庫)


おもしろかったー!読み終わちゃったのがもったいない。
ページが残すとこあとわずかになると、終わるのが淋しくなった。


その気持ちは何に似てるかっていうと、
気のあう人たちがいるとして、
そういう人たちと飲んでると夜が明けはじめて、みんなもう
何も言うことないんだけどそれでもまだ解散せずに、
この時間が続いてほしいな、と思うのに似てる。


『プレーンソング』には起承転結らしいものがない。
最後にみんなで夏の海に行くってのが一応のクライマックス。
でも、無理やり「起承転結」にあてはめるならば
「起」か「承」あたりで出てきた競馬好き二人は、
後半で全く言及されなくなる。もっとタイトに構成された
小説ならば、こういう二人にも何らかの役割が割り当てられてて
彼らもそれなりのはたらきをして小説が着地点を目指して展開していくのに
一役買うのだろうけど『プレーンソング』にはそれがない。


時間・空間・人間の関係性すべてがゆるくて、私はそれが
いいと思った。日常をうつしてて。そして風通しがよくて。


『プレーンソング』の風通しのよさは、
今並行して読んでる『罪と罰』と好対照をなす。


罪と罰』の方はとてもタイト。この文章の流れにのって悪くいうと
小説世界が絶えず緊張していて風通しが悪い、というか
風なんておこりっこない、ということになるのかな。


でも『罪と罰』のような高い虚構性をもつ小説も
それはそれでまた魅力的だ。