『ポロポロ』(田中小実昌)− 随筆ふう小説


ポロポロ (河出文庫)

ポロポロ (河出文庫)


保坂和志がこの小説のことをおもしろいってどこかで言ってて、ずっと気になってた。
買ったままになってたのを最近ようやく読む。


よんでみると・・・


絶対におもしろい、というのではなく、なんかおもしろい。ぼんやりとなにかを思い出して、くすっと笑うときに感じるようなつかみどころのないおもしろさがある。


きっちり厳密に組み立てられた短篇小説というよりは、思いつくがままに
筆を走らせたような随筆風小説。


題名にもなっている「ポロポロ」というのは、「ぼく」の周りで通じる言葉で、それはお祈りの時の擬態語。ポロポロするというのが、お祈りをするということ。


この言葉が、一般に流通している言葉と全く同じ重みで使われているから、ユーモアがただよう。


でも考えてみれば、わたしのうちにも家族語はあり、家族語を使うときにことさら構えたりしない。あぁ、でも、内輪だけで話すときは確かに構えたりしないけど、そもそも人に言おうとは思わないもんな。


そう考えると、この小説で「ポロポロやっていた」とか読んでなんか楽しくなるのは、自分が内輪と認められているような気になってくるからなのかもしれない。あるいは、内輪とか外輪とかがそもそも区別されない空間にいる心地よさを感じるからだろうか。