『池澤夏樹 アジアの感情』読了

池澤夏樹 アジアの感情』(新井敏記) 読了

池澤夏樹 アジアの感情 (スイッチライブラリー)

池澤夏樹 アジアの感情 (スイッチライブラリー)


内容が刺激的かというと、どうかな・・・


インタビュアーが池澤夏樹の「よき理解者」すぎるんではないだろうか。
受け答えの様子は丁々発止というものではなく、あくまでも、作家に心酔しているインタビュアーが、作家が自分の思考をなぞりなおすお手伝いをしているという感じ。


つまりこのインタビューでは、すでにいままでの作品で明らかになったことの表面をなぞっているだけであって、何かあたらしい問題提起の種が仕込まれているわけではない。という印象をうけた。


そんなインタビューも平和で温和でいいのかもしれないけれど。たぶん池澤夏樹の小説読んでるほうがおもしろい。


すでに分かっていることを何度も語るのは居酒屋トークで充分。分かっていないということを分かろうとすること、分からないことを語ろうとすることのほうにこそ刺激はある。


あと池澤夏樹本人による自作解説っぽいことも書いてあった。特に『花を運ぶ妹』(ISBN:4163187707)について。この小説を読んだことがある人にとっては自作解説読むのもおもしろいかも。私は自作解説読んでも読んでみようとは思わなかったけど。


ひとつうなずきながら読んだのは、「自分を新環境に導入してくれるインテリの存在価値」ということ。要約すると、新しい環境に入っていくときに、知識人は必要だ、知的な質問に対して知的な答えが返ってこない場合は適応するのがむずかしい、生活感だけでは無理がある、だから新環境に同じ物差しをもってくれているインテリがいてくれると非常に助かる、というようなことになる。


私は普段「経験・カン・度胸」がスローガンになっている泥臭い現場にいるので(そしてそれに疲れているので)↑の知的な質問には知的な答えがほしいというのが分かる気がした。


また、池澤夏樹に関しては、今読売で連載やっている「すばらしい新世界2」が気になっている。ということでこの前編となる『すばらしい新世界』(ISBN:4122042704)は入手し、読み始めた。人間の生き方・社会との関わり方を題材にした骨太小説っぽい印象をうけているから。