[感想]『夢十夜』(第一夜)− 漱石と鏡花
- 作者: 夏目漱石
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 1970/05/12
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文庫版のページにしておよそ3ページの超短篇。
これがまた読み応えあり。
今『超短編小説集』を半分くらいまで読み進めたけど
どれひとつとして私の心には響かず、
短篇って相当難しいんだろうと思ってたところ。
- 作者: ロバートシャパード,ジェームズトーマス,Robert Shapard,James Thomas,村上春樹,小川高義
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 1994/01/08
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だけど漱石の夢十夜は夢うつつのあわさいが衒いなく
描かれていて安心して身を任せていられる。
幻想的なはなしでありながら、情景が端的に描写されているので
読者はその描写をあしがかりにしておはなしのなかにすっと
はいりこんでいける。そしてそれがまた美しい世界。
『第一夜』のモチーフになっているのは、「死」、「約束」、「化身」、「再会」で泉鏡花ちっく。けど、文章に抑制が効いているので、
鏡花ほど過剰な感じはしない。
鏡花と漱石というと、扱う世界があまりにかけはなれているので、
いまひとつ自分の頭のなかで結びつかないんだが、
でも実は、この二人は同時代人 *1
で漱石は鏡花のことを「天才だ」と評していたりする*2。
鏡花って、どうしても時代がかってて大げさだから、
江戸っ子の漱石の好みにはむしろ反するんじゃないかと思ってた。
私自身、やっぱ漱石と鏡花が同じ時代に生きていたってのが
なかなか実感できない。作品として発露するものがあまりに違いすぎて。