『ちぐはぐな身体-ファッションって何?』(鷲田清一)− 人はなぜ服を着るのか


ちぐはぐな身体―ファッションって何? (ちくま文庫)

ちぐはぐな身体―ファッションって何? (ちくま文庫)


とっても読みやすい身体論・ファッション論。おもしろかったので、割り込みで読み始めたにも関わらず優先度高でさっさと読み終わった。



サクサク読めたから、まだまだ哲学本読めるわね、って思いあがってたら、あとがきには著者のこんな文句が。


高校生のカップルが目の前にいることを想像しながら語りおこしました(大意)。

どうりで。



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要点

  • まず、人が服を着るのは、自分の身体イメージを補強するため。
  • 人が自分の身体に対して抱いてイメージは実は非常に不安定。
  • それもそのはず、私たちは自分の身体の大部分を自分でみることができない。背中、顔(鏡に映る顔はいつも鏡チェックように作った顔)、脚の裏側など。
  • そこで人は自分の身体の輪郭をまず自分が感じ取れるように↓のような手段にたよる。いずれの手段によっても、皮膚感覚により、身体の輪郭があきらかになる。
    • お湯につかる
    • シャワーをあびる
    • (運動をしたりして)汗をかく
    • 日光浴する
    • 人に触れる、人に触れられる
    • 服を着る
  • その服だが、服には2種類ある
  • ひとつは「制度によりそった服」、もうひとつは「制度を侵犯する服」
  • 「制度によりそった服」の代表は制服
    • もともとは制服は個人を生まれ・育ちから解放して自由にするためのものだった
    • が、現代では制服は没個性の代表格のようにいわれている
    • それはそれとして、「自分探し」に疲れ気味な人が多い今、制服のなかに隠れて「自分探し」をしばらくは忘れてしまう、という着方もあるだろう
  • 一方で「制度を侵犯する服」とは
    • 着崩すファッションのこと。制服を着崩す、とか
    • 服を着崩し、制度からの距離を都度はかりながら制度からはなれていってみるという過程を経るうちに、人は「わたし」になっていく

この本のなかで紹介されてた本でおもしろそうだったもの

  • 『コミュニケーション不全症候群』

男女が互いを条件で品定めしあうところを「人肉市場」とよんでいるのが気に入った。

コミュニケーション不全症候群 (ちくま文庫)

コミュニケーション不全症候群 (ちくま文庫)

「こうありたい自分というイメージを勝手に作り、そのイメージに自分を合わせようとすることがオリジナリティだなんて、お前馬鹿か?」(だいたい)っていうものの見方が気に入った。



(「はまぞう」で「ビデオ」「DVD」検索したけど、でない。)


感想


自分の身体ぜんたいの輪郭をとらえるには、視覚ではだめで皮膚感覚によってしかとらえられない、という発見がおもしろかった。


ところで、存在するものを存在するものとして肯定する、ということについて考えてみた。


著者はこの本のなかで川久保玲のショーの感想も書いている。「モデルが男性のスーツを着てでてくるからこそ、そこはかとない女らしさが漂っていた」(だいたい)と。女らしさを出すために男装をさせる、というのは、そもそも女らしさを全肯定しているからでてくる発想。


そうすると制服も同じで、惰性や従順さからではなく、意思のもとに制服を制服として着る人がいるとすれば、その人は「個」を全肯定しているからこそそんなことができるのかもしれない。「わたしは服なんかで規定されないわ」って。ここには二つの(逆の)方向の力がはたらいている。ひとつは、社会的な属性のなかに隠れようとする力、もうひとつはどうしたって消せない「個」の力。


よく分かんなかったこと

よくよく考えると、「制度よりの服」を「着崩さないで」着た時の解釈に二通りあるみたいで混乱する。

  1. ひととき「わたし」から解放されて社会的な属性に還元される自分を味わうことができる(79ページ)(肯定的な解釈)

と、いいつつ、

  1. 身体イメージが実は貧弱だということを隠蔽する(167ページ)(否定的な解釈)


どっち?どっちもってこと?またはどっちもおなじこと?


私は読みながら、服に関しては二つの切り口で論がすすんでいるのかな、と思った。二つの切り口とは、

  1. 制度に近い服か、制度から遠い服か
  2. 着方がドレスアップかドレスダウンか

表で書くとこういうこと。(あ、Wikiとちがって「はてな」では表つくれないのかな?ちょっとやりかたわかんない)

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制度よりの服 制度を侵す服
                                                                                                        • +
崩さないで着る A C
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崩して着る B→Dに移行 D
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  • Aについて

ひととき「わたし」から解放されて社会的な属性に還元される自分を味わうことができる(79ページ)(肯定的な解釈)
と、いいつつ、
身体イメージが実は貧弱だということを隠蔽する(167ページ)(否定的な解釈)

  • Bについて

各人が「わたし」になっていくためのプロセス(55ページ)

  • Cについて

かかれていない。制度を侵す服+ドレスアップという組み合わせは考えられないということ?確かにどんな状況なのか考えにくいが。

  • Dについて

Bと同じ



あ、もう寝なきゃ。