『熱海殺人事件 最終章 平壌から来た女刑事』(北区つかこうへい劇団)− 使い古された話ばっかり


お金、返してよ。


本当につまりませんでした。
一人で観に行っててよかった。人と一緒だったら、「変なものに誘っちゃってごめんね」って申し訳なく思っただろうから。


とはいえ、あれを楽しめる人もいるんだろうな。
どこらへんが見どころなのか、教えてほしい。
そしたらまた考えが改まるかもしれない。


私が思ったのは、こんな感じ。

  • 啓蒙劇のつもり?

↓のようなことを、長台詞でこれでもかというくらい訴えてくる。
北朝鮮で人々が飢えている惨状を知りつつ、日本やアメリカは北朝鮮を助けようとしない。それは、北朝鮮には資源がないから」
「たった13人の拉致でガタガタ言って。では戦争中の50万人の朝鮮人はどうなったのか、教えてもらいたい」


だけどこんなのはNHKをはじめマスメディアによって一般に浸透済みの見解でしかない。
すでにどっかで聞いたことがある見解を声高に叫ばれてもアクビがでるだけ。
しかも本当にがなりたてるから、眠れもしない。

  • 女ってそんなもの?

この劇で扱われる女がみなステレオタイプ
堕胎の影響で子宮をとられてしまった女、男に性的な奉仕を強いられる女、不美人に生まれたために不遇をかこつ女。


はぁ。つまんない・・・。全部使い古し。

  • おもしろかったところ

神戸/長崎の小児殺人事件の犯人のその後という設定は面白かった。
でも、あの設定、効いてたのかな?という疑問は残るけど。
劇の流れからするとあの人いなくていいんじゃないの?



  • 劇中の置換可能な地名について

劇の地方公演でたまにあるけど。
脈絡のないところで、台詞のなかに、地元の地名や特産物が仕込まれてたりする。置換可能な単語なら、なくていいんじゃないの〜?


今回、東京の警視庁が舞台なのに、「そんなやつは浅野川にぶちこめ」みたいな台詞があって、不自然だなーって思った。


客とのコミュニケーションの一環??そんなことでしか客の注意を
ひけないなら、詰めが甘い、やりなおし!だ。

  • 砂を食べたせいで血を吐いて死ぬ?しかもばたばたと死んでいく?


砂じゃなくて毒をしこめ、毒を。
砂を米と間違えて食べて血を吐きながら死んでいく??ふーん。それで?


現実にひきよせて考えたとき、
「そんなことってあるかなー」ってひいちゃう。
虚構性がむきだしにされるということ。
で、それを逆手にとってはなしを進めていくってのは
小説でもあるし、よいことだと思うけど。
この劇の場合、洒落ってわけじゃなさそうだったし。


「洒落?でも洒落じゃなさそう・・・」ってのは、この劇みながら
ずっと感じてたこと。みんながもう既に知ってることを
声高に叫ぶってのも、洒落なのか?洒落であってほしいけど、
洒落ですってサインは受け取れなかったような気がする。

  • 東京のどこかに核爆弾が隠されているということについて

で、ある人物ひとりの意向で日本なぞいつでもふっとばせるという設定。
いつの時代の話ですか。おはなしの設定としては、
えらく古い手だなと思う。

  • 舞台上の暴力について。殴る・蹴るだけでいいの?

人が殴られているところをみて会場から笑いがひきだせているところが興味深かった。
だけど、今回、加虐/被虐がテーマのひとつっぽかったので、
暴力だけじゃなくて、あらゆる種類の関係形態が
でてきてもよかったんじゃない?
ってか、殴る・蹴るばかりってのは人間のもつ攻撃性のとらえかたとしては能がないよね。


たとえば、実際の事件で、イラクアメリカ兵/イギリス兵による
虐待問題があったけど、あそこであったのは、
肉体的な暴力はもちろんだが、「はずかしめ」をあたえることを
目的とした虐待も多かった(衆人監視のなかセックスのまねごとをさせる、自慰をさせる、裸でクレーンからつりさげる http://www2.asahi.com/special/iraqrecovery/TKY200501190117.html)


ということで、久々に「金返せ」と思った。
ほんと、これを楽しめた人には、どこを楽しんだか教えてほしい。
もちろん皮肉じゃなくて、本当に。
教えてもらったほうが自分のものの見方が広げられるから。